ドラマの中の英語

The name of the game is communication

try vs. try to

受験シーズン真っ盛りというわけで、本屋で参考書を眺めてみたんですが、すっかり忘れていることがたくさんありました。以前クジラ構文を調べたことがあったので、

ドラマの中のクジラ構文 - ドラマの中の英語

その延長でなにか面白いネタは無いかな?と探したらありました。不定詞と動名詞で意味の変わる動詞達です。stopとかrememberとか。なつかしー。でも、海外ドラマ鑑賞に必須な動詞はtryだけです。stopとか他のは、余力があれば覚えるくらいでいいです。tryの出現が100ならstop, rememberは5の割合でしか出てきません。メタルスライム級です(笑) 是非ともtryの違いを覚えましょう。以下、海外ドラマを見続けて自分の脳の中に作られたtryの違いを説明したいと思います。

try / やってみる

tryの意味は「やってみる」です。過去形は「やってみた」ですし、命令形は「やってみて」ですし、疑問形は「やってみる?」です。

I'll try some coffee.

Twin Peaks/Season 2/Episode 18

の意味は、「コーヒー飲んでみようかな」です。このシーンは、二日酔いにコーヒーが良いと聞いて試してみる直前のセリフ。本当に二日酔いが治るかどうかは分かりません。

I'll try drinking some coffee.

と言い換えても同じです。動名詞は意味を変えませんね。

他にも、

Try again.

は「もう一回やってみて」という意味。最初にやってみて失敗したんでしょうか。

Try doing it again.

とも、冗長ですが、言い換えられます。このように、動名詞とか全く関係なく、tryの本来の意味「やってみる」を覚えましょう。実は、ドラマの中では動名詞のtry ...ingはtry toに比べれば全然出てきません。だから、try ...ingでなく、tryそのものの意味を覚えたほうが将来役に立ちます。

try to / 頑張ってみるけど・・・

さて、問題はtry toです。不定詞とか関係なく、このtry toはtryと別の英単語、例えば助動詞とでも思って下さい。try-toとかtrytoという一単語の助動詞です。意味は「頑張ってみるけど・・・」です。この、butが含意されているのがポイントです。つまり、頑張るけどダメっぽいがニュアンスとしてあります。

ここでちょっとだけ立ち止まって「やってみる」と「頑張ってみる」の違いを日本語として見てみます。夏休みにバイトするシチュエーションを考えてみます。「夏休み暇だからバイトでもやってみるか」は前者ですね。2・3日でバックレるかもしれません。しかし、この子がサッカー部で朝から晩まで練習に明け暮れてたらどうでしょうか。疲れた部活の後に深夜までバイトです。「iPhone買いたいから部活の後だけどバイト頑張ってみるか」。普通の人なら頑張るになるはずです。ここで重要なのは、同じこと(バイト)をやるにしても、人やその時の状況・背景によって「やってみる」になるか「頑張ってみる」になるかは異なることです(つまり英語だと「try」になるか「try to」になるかは異なる、とも言えます)。そして、「頑張る」には何か必死さが感じられます。

さて、try toについては、実際のドラマのシーンを詳しい状況説明付きで見てみます。というのも、どういう状況で使われたのかが重要だからです。

Homeland

次のシーンは、地下鉄サリン事件がベースになっている話から。テロリストに捕まりサリンの実験台にされたCIA捜査官のQuinnは、事前に密かに飲んだ解毒剤の効果もあって即死だけはなんとか免れ、その後CIAに保護され、病院でCarrieとSaulに見守られます。ドイツのどこがサリンテロのターゲットなのか、Quinnが持つであろう情報にドイツ当局の期待が集まりますが、意識不明のまま死線を彷徨います。その時、一瞬だけQuinnが意識を取り戻します。一生懸命声を掛けるCarrieに何かを伝えようとするQuinn。しかし、開けた口からは声が出てこず、吐血してまた昏睡状態に陥るのでした。そんな中、ドイツ当局へSaulが情報収集で出向きます。ドイツ当局のAstrid捜査官は、Quinnが意識を短時間戻したと聞き、何か言ったかと聞きます。Saulは「He tried to.」とだけ答えます。はい、Quinnは頑張ったんです。「やってみた」のtryじゃないんです。サリン中毒でほぼ死にかけていたけれど、頑張ってテロリストの情報を伝えようとした。だからtry toなんですね。そして、「頑張ったんだけど・・・(ダメだった)」という意味が裏に隠れていることが分かります。

Astrid: "You've come from seeing Peter Quinn?"

Saul: "Yes."

Astrid: "How's he doing?"

Saul: "He regained consciousness, briefly."

Astrid : "Did he say anything?"

Saul: "He tried to."

Homeland/Season 5/Episode 11

The Big Bang Theory

自分の脳科学の論文が雑誌の表紙を飾ることになり興奮するエイミー。しかし、シェルドンは全くその話を気にかけず、結果エイミーは動揺してしまい、シェルドンとしばらく距離をおきます。何故エイミーがそういう行動に出るのか分からないシェルドンは、恋バナのエキスパートのペニーに相談。ボーイフレンドとして彼女が興奮することには少なくとも興奮するよう頑張る必要がある、とアドバイスするペニーです。ここでは「やってみなさい」とtry単独でも良さそうですが、ペニーはシェルドンがそういうの苦手なのが分かってるんですね。だから、少なくとも頑張ってみろというわけ。人によってtryになるかtry toかは異なると上で書いたのはこういう状況があるため。このシーンの様に、try toはat leastと相性が良い印象です。駄目かもしれないけど少なくとも頑張ってみろ、というニュアンスがありますね。ちなみにこのシーンは、excited byが連続で出てきて面白い。

All right, honey, she's upset. You're her boyfriend. You have to at least try to be excited by the things she's excited by.

The Big Bang Theory/Season 5/Episode 12

Breaking Bad

荒野でのメス作りにまた励みだすウォルターとジェシー。しかし、ジェシーの不注意によりバンのバッテリーが上がってしまい、そしてバッテリーから上がった火を消すため飲み水を使ってしまったため、二人は誰もいない荒野で死にそうになります。携帯のバッテリーも無くなりお手上げの中、ウォルターは車のバッテリーの一部をくるくる回すことで、バッテリーを充電(トリクル充電)しようと頑張ります。ここでは進行形なので、実際回しながら「頑張っている」ところです。もしこれがtry toでなかったら、生きるか死ぬかの瀬戸際で必死に充電している感じがなくなってしまいます。

ジェシー: "What's this?"

ウォルター: "I'm trying to trickle-charge the battery."

ジェシー: "Seriously? Just by turning that thing?"

Breaking Bad/Season 2/Episode 9

まとめ

以上、私がドラマを見ていたら脳内に勝手にイメージが出来てたtryの説明でした。私の中では不定詞と動名詞とかいう分類じゃないんですね。try とtry toという分類です。不定詞って言っちゃうと「to +動詞の原形」なんだけど、なんかドラマの会話とはズレてるんですよね。そのtoはtryにくっついてるイメージ。Homelandの例のように、「I tried to.」という言い方が結構多いです。「頑張ったけど・・・(ダメだった)」。だから、try toで一つの単語とか途中で書いちゃいましたが。ま、toの後に直前に出てきた動詞が省略されているんですけどね。でも省略されちゃうくらいだから、やはり不定詞という分類に違和感が半端ない。

最後に、try toを使ったドラマに非常によく出てくる言い回しを紹介して終わります。

What I'm trying to say is...

このセリフが出てくる状況が分かるでしょうか? こっちが頑張って説明してるのに、相手が全く分かってくれないんです。だから、「俺が(さっきから必死に)言わんとしているのは・・・」という意味なんですね。そして、try toに付属するダメだった(=お前は分かってない)というニュアンスも入っています。

さていかがでしょうか。文法的視点からすれば変なこと言ってるのは自覚していますが、ドラマ見てるとこういうイメージが勝手に作られていくんですよね。それが面白いです。