ドラマの中の英語

The name of the game is communication

Evil Genius: The True Story of America's Most Diabolical Bank Heist

Evil Genius(邪悪な天才)はネトフリが渾身の力を込めて送り出したミニシリーズ番組。3時間があっという間に過ぎること請け合いの、雨の週末の時間つぶしにうってつけのドキュメンタリーだ。

ことは2003年に遡る。ある郊外の街での銀行強盗だ。その犯人の出で立ちがまず異様だった。首を隠すように着た白いTシャツにはスプレーで”Guess”と書いてあり、手には杖型の拳銃。そして、胸元の異常な膨らみは体に巻いた爆弾だという。銀行員が現金を用意している間、カウンターにあった飴玉を舐める落ち着きっぷり。そして現金を入手して銀行を出る際は、杖を片手にチャップリンを思い起こすかのようにルンルン気分で出ていく容疑者。警察に包囲されるとしかし、自分は鍵付きの首輪に繋がっている爆弾を外すため、スカベンジャーハントをして指示された通りのことをやっただけと言う。包囲によって進退窮まると、時間だけが過ぎ去っていき、胸元のタイマーの電子音が次第に速くなり、警察官がその男を拳銃で狙いを定めている中、身につけた爆弾の爆発で死んでしまう。この全てが映像として残っている。遺体には頑丈な首輪が巻かれており、当時の警察はこの男の首の方を切断しなければならなかったという。そして車の中からは、詳細な銀行強盗から首輪の鍵の入手手順メモが出てくる。そんな嘘のような本当の事件が、本ドキュメンタリーのテーマだ。そのどこにでも居るビザ屋の配達員ウェルズは銀行強盗の容疑者なのか、それとも仕立て上げられた無実の被害者なのか? この事件後に続けて起こった同じピザ屋の別の配達員の怪死。そしてそのピザ屋の目と鼻の先で起こった一見無関係の冷凍保存殺人事件。これらがある人物を中心にして奇妙な関連を描き出すのだが、もうこの時点でワクワクが止まらなくなる。視聴停止できないこと必至だ。え?これって本当にあった話なんだよね?と視聴中何回も自問してしまうくらい。他の刑事モノ番組で、犯人に爆弾付けられて意のままに操られるなんてよくあるエピソードだし。メンタリストでは、リズボンがそうなってた気がする。ただ、番組途中で日本のTV番組でのこの事件の報道シーンも出てくるので、やっぱり本当だったのねと納得せざるを得ない。メンタリストもこの事件が下書きだったわけだ。

本作品のタイトルにもなっているEvil Geniusこと、中心人物の女性マージョリーがこの事件を解く鍵でもあり、障害でもある。この人、自分は邪悪の天才というより、キ印の方の印象が強く残った。精神科医からありとあらゆる病名を拝命したマージョリーを数年の間に渡り取材で話を聞き続けた制作者には拍手を送りたい。 certifiable / 精神異常と認定可能な - ドラマの中の英語 という形容詞にピッタリの人を初めて知った(笑)  彼女は知的であることは間違いないが、相手に話すことを許さず、嘘八百はお手の物。それでいて、相手を巧みに操ることに慣れている。その上での、早口での汚い言葉の雨あられのトークは、CIAも真っ青の拷問だったろうと思う。でも個人的に、彼女の英語はなかなか楽しむことができた。今までに聞いたことがないタイプと言うか。海外ドラマには絶対出てこない人物であることは確か。そんな彼女には過去数名のボーイ・フレンドが居て、当然のことながら、みんな怪死している。やばい、これ以上書いてると全部書いてしまいそうなのでこの辺で。でも一点述べておきたいのは、捜査の管轄の問題やメンツなどの問題で、重要証拠がFBIに上がらなかったのが残念。もっと早い解決があったと思えるので。

一応、IMDbでの現時点での評価は★7.8と中の上くらい。個人的に、最後に急に出てきた感じの売春婦は、もうちょっと子供の事とか深掘りして欲しかったのと(DNA検査で本当に彼の子かとか)、ウェルズは無実ならなぜ爆弾爆発前に犯人のことを警官に話さなかったのだろうか、という疑問が頭の中を回っている。銀行での態度や死の直前の口調などから、爆弾が偽物と思っていたのかもしれないが、それだったら犯人側の一端を担ったとも思えるし・・・

最後に、クリシェに聞こえるけれど、事実は小説よりも奇なりを思い出す秀作でした。Heist(強盗)という英単語もついでに覚えちゃおう。

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