ドラマの中の英語

The name of the game is communication

Making a Murderer

週末、ネトフリのドキュメンタリーMaking a Murderer(殺人者への道)を一気視聴(binge watching)してしまった。”こんなことも現実にあるのね”という感想しか浮かばない、事実は小説より奇なりを地で行く作品。話の大まかな筋は以下の通り。ネタバレです。

www.imdb.com

話は30年前にAvery(上の写真の人)がレイプ未遂で逮捕されるところから始まる。この人はちょっと頭が弱い人で、過去に猫に火を付けたり、近隣住人とトラブルがあったり、ローカルコミュニティでは曰く付きの人。そのレイプ未遂は状況証拠しかなかったんだけど、あいつは怪しいという捜査官の先入観や、当時の科学捜査手法もまだ貧弱でDNA検査も頼れないという状況で、捜査関係者はあれよあれよとストーリーを組み立て彼の逮捕までこぎつけてしまう。本人は一貫して無実を主張してたんだけど。それで、裁判もあれよあれよと有罪になってしまい、32年の実刑を食らってしまった。その間に、レイプ未遂の真犯人が別の地区で捕まり、この未遂を自白したのにもかかわらず捜査関係者が放置したりして、結局18年の時が過ぎてしまう。しかし、この18年間はDNA関連の技術向上を果たすのには十分な期間。最終的に、レイプ未遂時のDNAがAvery本人のものとは別人のものと分かっちゃったため、無罪放免になり娑婆に帰って来、Averyは一躍脚光を浴びることになる。政治家のパーティーに呼ばれたり、彼の名を関した法令が制定されようとまでしたほど。そして、彼に濡れ衣を着せた地方行政機関に、捜査の怠慢などの咎で30億円以上の賠償金を請求して、大金を手にできる直前に、これまた奇妙な事件が彼の周りで起こってしまうのだが。

ちなみにこのAveryさん家は、車のスクラップ場を生計の糧にしているんだけど、年代物の車なんかもあったりしてその筋には有名だったみたい。その日も、カーマガジンの写真家テレサが訪れて車数種類の写真を撮る手はずになっていた。しかし、彼女の足取りがAvery家を後にしてから忽然と消えてしまったから大変。つまり、Averyが彼女を最後に目撃した人物ってわけ。ちなみに、その近隣は森や雑木林になっていて、地元の人は鹿狩りなんかもしてる感じの田舎。テレサの友達有志で捜索隊が結成されたり、メディアもあの無罪のAveryが最後に会った人物ということで注目が集まる。しかし、捜索中に思わぬ展開が起きてしまう。テレサの車がAvery家のスクラップ場の片隅から発見されたのだ。捜査令状が取られ、Avery家を家宅捜査すると、テレサの車の鍵が出てきたり、車中からはAveryの血が発見されたり、Avery家の前の焼却場からはテレサ本人の骨の一部が発見されてしまう。即座にAveryは逮捕されてしまった。でも、やっぱり状況証拠だけで、Averyが直接手を下した証拠は出てこなかった。ちなみに、Averyのスクラップ場の周りには、Averyの親戚なんかも住んでいてAvery一族の土地みたいになっている。その親族の一人から後日決定的な証言が得られ、捜査は大きな進展を迎える。ブレンダンという16歳の少年が、Averyと一緒にテレサを殺したと証言したんだ。Averyはこの少年もろとも起訴され、裁判を戦うことになるんだけど、このドキュメンタリーは弁護側に密着し、その過程を追った作品だ。

このドキュメンタリーはAvery側にバイアスが掛かっているので、そこは注意したほうがいいけれど、数十億手に入るのにそれを蹴ってまで殺人を犯すか? 捜査手法がずさんで捜査関係者がAveryに不利になるように証拠を捏造したんじゃないか、16歳の少年ブレンダンも頭の弱い子なんだけど、自白が捜査関係者によって強要されたんじゃないかなどが裁判の焦点となる。この作品はシーズン2まで出てるんだけど、シーズン1は二人の有罪が三審制で決定してしまうところまで描き、シーズン2はその後の展開、特にAveryに凄腕の弁護士が付いて証拠を洗い直し、新しい証拠を裁判所へ提出し再審を求めることや、ブレンダンの自白が強要され無効という主張を争うことに注がれる。ちなみにポテチで例えると、シーズン1はカラムーチョを食べてる感じなのに対し、シーズン2は急にうすしお味になるので、そのギャップに結構驚く。

いつものように、IMDbなんかのコメ欄では、無罪か有罪かもそうだけど、アメリカの司法制度の崩壊だとか、バイアスがかかりすぎてドキュメンタリーと言えるのか、コメディみたいという主張など入り混じって喧々諤々、すごいことになっている。

シーズン2の10エピソードを見る価値があるかはちょっと疑問だけど、シーズン1は冒頭に述べたように”こんなことも現実にあるのね”という世にも奇妙なノンフィクションなので、時間があれば見てもOK-ishな作品。だってAveryの旦那、2回も捕まっているんだよね。最初は無実で、2回目も無実じゃないかと思わせられる。こんなの、宝くじ一等に2回当たるより確率低いはず。個人的に犯人当て(whodunit)は苦手なんだけど、真犯人は土地勘があるからテレサの友人とか元彼なんかの説は却下かな。捜査当局が殺したのも考えにくいよね。Avery嵌めるだけならもっと楽にできるから。第三者のAveryを嵌めるためわざわざ無関係の殺人事件の証拠を捏造するのも考えにくい。証拠捏造っぽく見えるのは、単に捜査官が怠惰でアホなだけの気がする。それも捜査する側としては罪深いけど。だから実は、自分の中ではまだAveryを完全に無実とは思ってなかったりする(笑) ちなみに、彼は現時点で既に50数歳なんだけど、人生の半分以上はムショ暮らしなんだって。これで無実判明なら100億円くらい取れるんじゃないかな。

Youtubeを検索すると、シーズン2が出た以降の進展も追えるので面白かったりする。例えば、Averyの双子の実子がインタビューに出てたり。このドキュメンタリーには何故か出てないんだけどね。シーズン3が出るという話もあるので、それが出てから一気見しても良い気がしてきた。双子のインタビューなんかも取り込まれるだろうし。まあ、問題は、何年後になるのか分からないところだけど。最後に、邦題の「殺人者への道」はなんか違う気がする。